『鏡の国のアリス』(かがみのくにのアリス、Through the Looking-Glass, and What Alice Found There)は、『不思議の国のアリス』の続編として、1871年にルイス・キャロル(チャールズ・ラトウィジ・ドジスン)によって書かれた児童文学である。原題を直訳すると『姿見を抜けて、そこでアリスが見たもの』となる。
この作品の中には、対称や時間の逆転などを含めた、多くの鏡のテーマがある。
前作、『不思議の国のアリス』が夏の日の物語であるのに対してこの物語はイギリスの冬の風物詩である「ガイ・フォークスの日」(11月5日)の前日から始まる。
ガイ・フォークス(イギリスの祭日)の前の寒い日にアリスは暖炉の前で仔猫と遊んでいました。いつものように仔猫と空想遊びをしていたアリスは暖炉の上に掛けられた大きな鏡が通り抜けられるような気がしたかと思うと次の瞬間には鏡を通り抜けて向こう側の世界に抜け出ていました。アリスはそこで『ジャバウォックの詩』という、鏡に映さないと読めない鏡文字の本を見つけます。鏡の中の家を出て、庭に入ったアリスは、おしゃべりをする花たちに、花と間違えられてしまいます。さらに、その庭でアリスが出会った赤の女王様は、アリスがチェスの試合で八番目の列まで動けば、アリスを女王にしてあげよう(プロモーションのこと)と持ちかけます。アリスは白の女王様の小さい娘の代わりにポーンとなって、チェスのポーンが最初の一手で二マス動けるように、四番目の列への列車に乗ってゲームを始めます。
それからアリスは、有名なマザーグースの詩で知っているトウィードルダムとトウィードルディーと出会います。『セイウチと大工』という長い詩を暗誦した二人は、マザーグースの詩通りに決闘をはじめてしまいます。アリスは続けて白の女王様と会いますが、白の女王様はぼうっとしたままで、最後には羊に変身してしまいます。
次の章で、塀から落っこちる寸前のハンプティ・ダンプティと出会ったアリスは、『ジャバウォックの詩』の意味を説明してもらいます。続けて、やっぱりマザーグースの詩通りに振舞う、ライオンと一角獣に出くわします。それから、アリスは白のナイトによって、赤のナイトから助けられます(この白のナイトは、多くの人々からルイス・キャロル自身を表現したものと考えられています)。
ついに八番目の列まで進んで女王になったアリスは、赤の女王様を捕まえて、物語を通して動かずじまいだった赤の王様にチェックメイトを掛けます。その後、アリスは夢(それが夢だったのなら)から目をさましました。
夢からさめたアリスはそばにいた黒い仔猫のキティに「あなたは赤の女王様だったんでしょう?」と話しかけます。そして親猫のダイナにおめかしをされていた最中の白い仔猫のスノードロップは白の女王、ダイナはハンプティ・ダンプティだったのだろうとアリスは考えます。そして最後は自らに問いかけます。夢の中の全ては赤の王様の夢の作り出したもの。だけどその夢を見ていたのは私。それならどっちがどっちの夢の中にいたのかしら?私?それとも赤の王様?と。
序詩 “Prelude”
ジャバウォックの詩 “Jabberwocky(en)” (鏡の家の場面参照)
トウィードルダムとトウィードルディー “Tweedledum and Tweedledee(en)”
セイウチと大工 “The Walrus and the Carpenter(en)”
「冬の野の白き時」 “"In Winter when the fields are white..."”
タラの目 “Haddocks' Eyes” / ひどく年老いた男 “The Aged Aged Man” / 方法と手段 “Ways and Means”/ 門の上に座って“A-sitting on a gate” (Haddocks eyes(en)参照) この詩は「門の上に座って」であるが、この詩の名前や呼び方が事前に示される。
アリス女王の歌 “Queen Alice song”
白の女王様のなぞなぞ “White Queen's riddle”
「かつらをかぶった雀蜂」
挿絵を描いたジョン・テニエルの提案により、ルイス・キャロルはアリスと弁護士のかつらをかぶった雀蜂が遭遇する場面を削除することに決めた。 この場面は、マーチン・ガードナーの“The Annotated Alice: The Definitive Edition(en)”に収録されている。
本文からの引用
「素晴らしいジャムなのにねえ」と、白の女王様はおっしゃいました。
「そうですね。でもわたし、今日はジャムはほしくないんです」
「欲しがったって、あなたは貰えやしませんよ」白の女王様はおっしゃいました。「明日と昨日にジャムはある――でも、今日のジャムは絶対にない。そういう規則なんですから」
(古いラテン語で“iam”あるいは“jam”という単語は、未来と過去の中だけでの「今」を意味する)
「足し算はできますわね?」と、白の女王様は尋ねました。「1たす1たす1たす1たす1たす1たす1たす1たす1たす1はいくつかしら?」
「分かりません」アリスは答えました。「数えそこないました」
「足し算はできないんだね」赤の女王様が話をさえぎりました。「引き算はどうなんだろね? 8ひく9は?」
「8から9を引くなんて、できっこありませんよ」アリスはすぐに答えました。「だけど――」
「引き算もできない」白の女王様がおっしゃいました。「割り算はできるかしら? パンわるナイフ――その答えは?」
「ええっと――」アリスが答えかけましたが、赤の女王様がわりこみました。「そりゃ、トーストに決まってるさ。引き算をもういっぺんやってごらん。犬ひく骨。残ったのは?」
アリスはじっくりと考えました。「もちろん、骨は残りません。でも、骨を取り上げたら――犬だって残りません。度を失って噛みついてくるでしょうから――それで、わたしも残りません!」
「それじゃ、あんたはなんにも残らないって思うのかい?」赤の女王様がおっしゃいました。
「それで、あってると思います」
「いつもながら、あんた間違ってるね」赤の女王様がおっしゃいました。「犬の度が残ってるじゃないか」
「だって、わたしはそんな――」
「そら、見てごらんよ」赤の女王様は叫びました。「犬は度を失ったわけだね、ええ?」
「そうかもしれませんね」アリスは慎重に答えました。
「犬がいっちまったんなら、犬の度が残ってるじゃないか!」と、赤の女王様は勝ちほこって叫びたてました。
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